ここまでのあらすじ
垂仁天皇は妻 沙本毘売らと戦闘し、戦いの最中に沙本毘売が産んだ子本牟都和気命 を受け取ったのち、沙本毘売とは死別してしまった。
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本牟都和気命と大国主神
月日は流れ、本牟都和気命青年になりますが、この青年には一つ大きな問題がありました。
それはこれまで一度も言葉を発したことがないということです。
皆そのことを大変心配していましたが、
ある時 空高く飛ぶ白鳥を見て、少しではありますが声を発したのです。

こう考えた垂仁天皇は、鷹狩のプロに依頼することにしました。
その鷹狩士は白鳥を追って全国を駆け回り、やっと捕らえることができましたが、それでも本牟都和気命
は声を発することはありませんでした。
どうしたものかと垂仁天皇は困っていると、寝ているときに夢の中に神が現れます。
その神は
「私のいる社を修復してくれるなら皇子は声を発するだろう」
と言いましたが、名乗ることはせず、消えていってしまいました。

どこの神か突き止めるために太占(ふとまに)の方法で、出雲の大社に鎮まる大国主神
であると特定し、またそこに派遣する人間は曙立の王がよいだろうということになったのでした。
メモ
太占とは鹿の骨や亀の甲羅を焼き、ひびが入った方向で占うといいう方法

曙立の王は言いました。
「出雲の大社に行くことで皇子が声を発するようになるならば鷺(鳥)は地に落ちよ」
すると見事に鷺が地面に落ち死んでしまいました。
「生きよ」
鷺は見事に復活。
「木よ、枯れよ」
木は見事に枯れます。
「生きよ」
見事に復活しました。

そんなわけで、曙立の王とその弟を皇子に付添わせることに決まったのでした。
また、ルートについては太占によって京都と大阪へ向かうのは不吉であるとされ、和歌山を経由するルートを使うことになりました。
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さて一行は出雲に近づき、泊まっているときに
急に本牟都和気命が
「あの山は、ただの山に見えてそうではない。もしかして大国主神の鎮座する祭場ではないか」
と声を出したのです。
これには付添い達も ついでに古事記を読んでいた私もびっくり。
(初めて話す言葉なのにめちゃめちゃしゃべるやーーん。)
急いで垂仁天皇のもとに遣いを派遣しました。
さて口を開いた本牟都和気命は肥長比売と一晩を共にすることになりましたが、
夜中にふと目が覚め、横を見ると肥長比売は蛇に姿を変えていたのです。
これに驚いた本牟都和気命は慌てて船を出しました。
一方、肥長比売も船を出し本牟都和気命を追いかけますが、
これによりますます怖がらせてしまい本牟都和気命は大和まで逃げ帰るのでした。


本牟都和気命が話をできるようになり ひと段落です。
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垂仁天皇の后探し
あっ、そういえば沙本毘売はこう言っていました。

ということで后探しをスタート。
候補として
氷羽州比売命、弟比売命、歌凝比売命、円野比売命の4姉妹が連れてこられました。
このうち上2人は超美人、下二人はブサイクでした。

垂仁天皇は上二人を選び、下二人は家に返すことにしました。
すると、返されてしまった歌凝比売命、円野比売命はこう考えます。
(このまま帰ったら知り合いに馬鹿にされてしまう…)
これを恥じた円野比売命は木に縄をかけて首を吊ろうとしました。
首吊りには失敗しましたが、弟国と呼ばれた地に着いたときに崖から飛び降りて死んでしまいました。
美人とブサイクがいて、ブサイクだけは返されるというお話、どこかで聞き覚えありませんか??? うんうんうん、そうです!!! 木花之佐久夜毘売命と石長比売命のお話です。 この時は返されてしまった石長比売命は邇邇芸命を呪い、 今回のお話では円野比売命は知人への面目から自殺をしています。 今回のお話のほうが現代の人間的な行動に近いことが描かれていますね。
木花之佐久夜毘売命と石長比売命のお話は
古事記って面白い! 神話のハナシ vol.5
をご覧くださいね

この木は古事記がつくられた時代の橘、現代でいう橙という柑橘類の木で、今でも正月に飾られます。
多遅摩毛理はやっとその実を見つけ持って帰ろうとしましたが、そのまえに垂仁天皇は153歳で崩御してしまいました。
そこで半分を后である氷羽州比売命に、半分を天皇の御陵に供えますが、
御陵の前で多遅摩毛理たじまもりが「木の実を持って帰りましたーーーー」と叫ぶと
次の瞬間 多遅摩毛理も死んでしまいました。
その後、垂仁天皇と氷羽州比売命の間に生まれた大帯日子淤斯呂和気命が景行天皇として即位しました。
垂仁天皇と沙本毘売の間に生まれた本牟都和気命ではないことに注意が必要です。