豆知識

なぜ宗教法人に税金はかからないか。非課税の範囲や措置の理由について(法人税・固定資産税等)

最近、社会保障の充実や各種税金の減税などを実現するために、宗教法人への課税に対する様々な主張が飛び交っています。
そこで、今回はこの時世に際して、宗教法人に対する税制優遇措置の内容と、措置が取られている理由・根拠ついて紹介してに紹介していきます。

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目次

なぜ宗教法人に税制優遇措置が取られているか。理由と根拠となる学説を紹介

たむ
まずは宗教法人に対しての税制優遇措置の根拠となっている学説を3つ紹介します

①公益説

宗教法人は宗教活動以外にも教育、文化財の保存、伝統の継承、墓地・納骨堂等の運営など、本来は国や地方公共団体等が行うべき社会一般の利益にかかわる活動を行っています。

このように宗教団体は宗教活動だけでなく、公益的な事業によって、国や地方の役割の一部を担っているため、課税するべきではないという考えに基づきます。

 

②政教分離説

まずは宗教法人法84条の条文を確認してみましょう。

宗教法人法84条
国及び公共団体の機関は、宗教法人に対する公租公課に関係がある法令を制定し、若しくは改廃し、又はその賦課徴収に関し境内建物、境内地その他の宗教法人の財産の範囲を決定し、若しくは宗教法人について調査をする場合その他宗教法人に関して法令の規定による正当の権限に基く調査、検査その他の行為をする場合においては、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。

以上のように、宗教法人への課税については特別の注意を払うべきことが規定されています。

これは国や地方公共団体が宗教法人に法人税を課すことで、意図的に特定の宗教法人を締め付けることを防ぐためのものであり、信教の自由を守るために課税するべきではないという考えに基づきます。

 

③法人擬制説

まずこの学説では、法人の実体は人の集まりで、法人は単なる所得の中継地点であるという考えを前提とします。この場合、法人税は所得税の前払い的性格を有しているといえるため、余剰金の分配を行うことができない宗教法人に対しては法人税を課税する必要がないとする考えに基づきます。

たむ
以上、宗教法人への課税優遇措置の根拠となる学説について、公益説・政教分離説・法人擬制説を紹介しました。

 

神社やお寺などの宗教法人における納税義務がない宗教活動・公益事業とそうでない収益事業

宗教法人の活動は宗教活動公益事業公益事業以外の事業(収益事業)の3つに分けることができ、それぞれで課税されるか否かが異なります。

たむ
まずは上記3つの活動・事業がそれぞれどのようなものか確認していきましょう。

宗教活動・・・宗教法人の目的を直接的に達成するために行う最も重要なもの

公益事業・・・公益の利益を図る目的で行なわれ、かつ営利を目的としないもの

公益事業以外の事業・・・収益事業ともいい、宗教法人の目的に反しない範囲で行われるもの

 

宗教法人の公益事業以外の事業(収益事業)には制限がある

たむ
宗教法人が行う公益事業以外の事業については制限があります。そのことについて記された条文を確認しましょう。

宗教法人法第6条2項

宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。

以上のように定められており、宗教法人の本来の目的の範囲内でしか事業を行うことはできません。

したがって、投機的性格を有するもの、風俗営業に該当するものなどは行うことができず、これに反すれば1年以内の期間に限り、事業の停止を命ずることができるとされています。

 

神社やお寺などの宗教法人が支払っていない税金「税制優遇措置の具体的内容一覧」

まずは、会社等の一般の法人が納税義務を負う税金の中で、宗教法人が支払っていない税金をかんたんに紹介します。

・法人税
・事業税
・関税
・事業所税
・特別土地保有税
・地価税
・固定資産税
・都市計画税
・不動産取得税
・印紙税

宗教法人が税に関わる場面はいくらでも考えられるため、上記がすべてを網羅しているわけではありませんが、基本的にはこれらの税目で優遇されていると考えていただいて差し支えないと思います。

ただし、税制上の優遇措置がとられているのは、基本的に宗教活動にかかわる部分のみで、収益事業に関する部分には一般の会社と同様に納税義務があります

なお、後の段落で詳しく紹介しますが、所得税は個人の所得にかかる税であるため、宗教法人から支払われる給与であっても、会社員等と同様、当然に徴収されております。

 

【法人税】宗教法人の収益事業は税率とみなし寄附金制度で優遇されている

法人税とは株式会社などの法人格を持つ組織が事業を通じて得た利益に課される税金です。宗教活動・公益事業には課されませんが、収益事業で得た利益にも課されます。

ただし、宗教法人の収益事業は一般の会社よりも優遇されている部分があります。

たむ
ここからは宗教法人の収益事業に対する法人税の優遇措置について確認しましょう。

 

宗教法人と一般の法人(会社等)との法人税率の違い

現在のところ、資本金1億円以下の普通法人と宗教法人においては法人税率は下記の通りに課されています。

800万円までの部分 それ以上の部分
資本金1億円以下の普通法人 15% 23.2%
宗教法人 15% 19%

このように宗教法人の収益事業における法人税は一般法人と比べて、800万円以上の部分が減額されています。

 

20%までの収益事業の利益を宗教活動に利用し、法人税を圧縮・節税できる宗教法人のみなし寄附金制度

法人が寄附を行うために金銭を支出する場合、損金となる金額の限度は資本金と利益の額によって異なりますが、大体2.5%〜10%程度に限定されています。

しかし、宗教法人にはみなし寄附金という制度により、収益事業の利益の20%までを宗教活動・公益事業へと繰り入れ、収益事業の利益を圧縮することができます

 

【固定資産税】宗教法人の土地・建物には収益力がないため非課税

固定資産税とは土地建物の資産価値に担税力を見出し課税される税金ですが、宗教法人の建物には収益力がなく、担税力もないため非課税となっています。

宗教活動のために用いる土地・建物の固定資産税については地方税法で以下のように定められています。

地方税法348条2 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。(省略)

・・・

三 宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地

・・・

【参考】宗教法人法第3条

この法律において「境内建物」とは、第一号に掲げるような宗教法人の前条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の建物及び工作物をいい、「境内地」とは、第二号から第七号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。
一 本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)

(以下省略)

また、東京高裁平成20年10月30日判決では「宗教の協議を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するために必要な当該宗教法人にとって本来的に書くことのできない土地」であることを要件としています。

 

【登録免許税】宗教法人の役員の変更や不動産(土地・建物)等に係る登録免許税は非課税(=登記料が不要)

一般の法人と同様に、宗教法人を設立した場合、役員が変更された場合、土地・建物等の不動産を取得した場合には、登記の申請をしなければなりませんが、その際に支払う登録免許税は非課税とされています。根拠となる条文は下記のとおりです。

登録免許税法【別表第三 非課税の登記等の表(第四条関係)】

一 専ら自己又はその包括する宗教法人の宗教の用に供する宗教法人法第三条(境内建物及び境内地の定義)に規定する境内建物の所有権の取得登記又は同条に規定する境内地の権利の取得登記
二 自己の設置運営する学校(学校教育法第一条(学校の範囲)に規定する幼稚園に限る。)の校舎等の所有権の取得登記又は当該校舎等の敷地、当該学校の運動場、実習用地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
三 自己の設置運営する保育所若しくは家庭的保育事業等の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記
四 自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記

 

【不動産取得税】宗教法人が土地・建物を購入した際の不動産取得税は非課税

不動産取得税は家屋の新築や土地の購入等により不動産を取得した場合に課せられる地方税で、固定資産評価額に基づいて税額が決まります。

宗教法人が「専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する境内建物及び境内地」は非課税とされています。

宗教法人が土地・建物を取得した場合は、取得から30日以内に不動産所在地の都道府県知事に申告し、不動産取得税非課税申告書を提出しなければなりません。

 

【印紙税】宗教法人の印紙税は宗教活動・公益事業・収益事業のすべてで非課税

印紙税とは経済的な取引に伴い作成される契約書や領収書などの特定の文書に課される税金で、収入印紙を文書に貼り付け、消印することで納税します

宗教法人の活動は宗教活動・公益事業・収益事業に分けられますが、いずれにおいても非課税です。ただし、土地賃貸借契約書や保証金の関わる建物賃貸借契約書、受取通帳等は課税文書となります。

 

宗教法人のお札・お守りの授与、ご祈祷等の対価性のない取引の消費税は不課税

たむ
次に、我々が日々の生活で最も身近な消費税と宗教活動の課税義務についてお話していきます。

まず、消費税が課されない取引は非課税取引・不課税取引・免税取引に分けられますので、それぞれをかんたんに紹介します。

不課税取引・・・課税要件を欠く取引

非課税取引・・・課税要件を満たすが、性質上または社会政策的配慮から消費税が課すことが相当でない取引。売上に税金はかからないが、仕入れにかかった消費税を差し引くこと(仕入額控除)ができず、事業者は損をすることがある。

免税取引・・・売上は0%(免税)扱いになりますが、その商品を仕入れた時に支払った消費税は国から還付(返金)を受けることができる。

 

消費税の課税要件「神社・お寺のお守り・おみくじ、ご祈祷の対価性」

まずは消費税の課税の要件を確認してみましょう。

①国内において行うもの
②事業者が事業として行うもの
③対価を得て行うもの
④資産の譲渡、貸付け、役務の提供

以上の要件に当てはまる取引には消費税が課税されます。

宗教法人のお札・お守り・おみくじ、ご祈祷料などは、それを一般の商品やサービスと捉えた場合の価値よりも高い金額が設定されているはずです。これは神仏へのお供えという性格が強く反映されており、対価性がないため不課税とされます。

 

宗教法人の活動の内、なにが消費税の課税対象となり不課税・非課税となるか一覧表

お札・お守り 不課税
ご祈祷 不課税
御朱印 不課税
グッズの販売 課税
拝観料 不課税
宝物館の入館料 課税
墓地永代使用料 非課税
埋葬手数料 非課税

 

【所得税】宗教法人の職員は一般の会社員と同じく当然に源泉所得税・住民税を支払う義務を負う

ここまで話したように、宗教法人は税制上の優遇措置を受けていますが、その職員には一般の会社員と同様に当然に所得税・住民税の納税義務があります。

私は友人から「お前は所得税を支払っていない」とからかわれたことがありますが、所得税の納税義務者は給与を受け取る個人ですので、当然に法人の税制優遇措置の範囲外にあります。

 

宗教法人の所得税、特に現物支給の例外「社務所・庫裏等の家屋の貸与を受けることによる利益は非課税」

所得税は金銭による給与の支払いだけでなく、現物支給も課税の対象となります。

したがって、一般的には物品の支給、社宅の貸与等は所得税の課税対象です。

ここで問題となりがちなのが、宗教法人の役職員やその家族が敷地内に住む場合の建物です。

所得税基本通達36-15では「土地、家屋その他の資産(金銭を除く。)の貸与を無償又は低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益」は「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」すなわち現物支給にあたるとされており、敷地内の建物は源泉所得税の対象となりそうです。

しかし、例外となる規定がありますので下記の条文をご覧ください。

所得税法施行令第二十一条 法第九条第一項第六号(非課税所得)に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

・・・

四 ・・・(省略)給与所得を有する者でその職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するために家屋の貸与を受けることによる利益

宗教法人の役職員は、常に神仏のそばに仕えてお世話をすることや不測の事態に備えることが役目です。したがって、宗教法人の役職員がその敷地内の家屋の貸与を受けることは、職務遂行上やむを得ないものとして非課税とされます。

ただし、貸与される家屋が職務遂行上必要な範囲を超える場合は、課税対象となるため注意が必要です。

 

 

 

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