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【火の穢れとは】鎮火祭や神宮の潔斎と火鑽具での火起こし 『古事記』黄泉の国訪問譚を用いて解説

こんにちは、神社関係者のたむです。

普段はTwitterで神社参拝がもっと楽しくなるようなツイートをしています!

まずは以下のツイートをご覧ください。

キャンプでの焚火など現代の我々は火について清浄で心が休まるものという印象を持っている人が多いと思います。しかしながら、神道にはもともと火の穢れという概念が存在しており、これは記紀等の神道古典のみならず、現在の神社での火の扱い方からも理解できます。

今回は火の穢れについてわかりやすく解説していこうと思います。

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忌火は火打ちと火鑽りの方法でつくられる

宮中や神社で用いられる清浄な火を忌火(斎火)と言い、これは火打ち火鑽りの方法で作り出されます。

火打ちについてはイメージできると思いますので、火鑽りの方法について説明します。

火鑽りは木でつくられた臼と杵をすり合わせることで火をつける方法です。火鑽りの中にも様々な方法がありますが、弓を用いて摩擦の力で火を起こす方法もこれにあたります。

黄泉の国での伊邪那美命の黄泉戸喫(よもつへぐい)と火の穢れ

古事記と日本書紀の別伝では、伊邪那美命は火之迦具土神を生んだ際に火傷をして死者の国である黄泉の国に行ってしまいます。(黄泉の国は本当に死者の国なのか伊邪那美命は本当に死んでしまったのかについては諸説ありますがここでは触れないでおきます。)

伊邪那岐命は黄泉の国で伊邪那美命を探して元の世界に戻ることを提案しますが、伊邪那美命は「吾、すでに黄泉戸喫よもつへぐいせり」と答えます。

黄泉戸喫とは黄泉の国の物を食べてしまったということですが、これは黄泉の国の食べ物自体ではなく、黄泉の国の火を使って煮炊きしたことが問題であると考えられます。

 

「神祇令」規定の鎮火祭と火の穢れ

火鎮祭は宮中において旧暦6月と12月に行われる祭祀です。

この時読まれている鎮火祭祝詞ではイザナミ命は火結神を産んで火傷を負い死者の国に至ります。そして黄泉平坂でイザナミ命が神を産み、これをもって火結神を鎮めたと記述されています。

記紀の内容とは若干異なりますが、ここからも火の穢れに関する概念があったことが読み取れます。

 

神宮では火鑽具を用いて鑽り出した清浄な忌火を用いる

伊勢の神宮では毎日朝夕の大御饌祭が行われていますが、この時に用いられている火は火鑽具を用いた舞錐式発火法で鑽り出された清浄な火です。

 

これは神饌についてだけでなく神職の食事についても同様で、

明治42年規定の神宮祭典奉仕員心得では

第4条 参篭中は左の各号を厳守すべし

二 斎館外に於て煮燔せる飲食物を用いさること

と規定されており、これは神宮の外で清浄でない火を用いてつくられた物を食してはいけないということであり、神域内でおこされた清浄な火を用いて煮炊きした物を食すことを定めたものです。

 

たむ
以上が神道における火の穢れに関する内容です。

火に対する忌避は古代日本だけでなく世界各地に見える概念のようです。火というものは私たち人間の生活を豊かにする一方で時には火災等により私たちを苦しめるものであったことでしょう。このような火の性質から清浄な火とそうでない火を分けて考えるようになったのかもしれませんね。

 

 

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