普段は三輪神社の神職をしながら、当サイトやXで神社の豆知識や日々思ったことを綴っています。
今回は、参拝者の方から実際にいただいた質問にお答えします。
それは、とてもシンプルですが意外と答えるのが難しい質問です。
「正中って、何センチなんですか?」
神社では参道の真ん中を「正中」と呼び、「正中は歩かないようにしましょう」とよく言われます。しかし、正中の幅がどれくらいなのかまで説明されることはほとんどありません。
神職の立場から、この疑問について考えてみたいと思います。
正中とは神社の中心を通る場所
まず「正中(せいちゅう)」とは、参道や社殿の中心を通る線のことです。
拝殿の正面から鳥居へと一直線につながる中心線をイメージすると分かりやすいでしょう。
参拝の際には、この正中を避けて左右どちらかを歩くのが一般的な作法とされています。
神社によっては案内板などで「左側通行」「右側通行」をお願いしている場合もありますので、その指示に従って参拝しましょう。
なぜ正中を歩かないの?
正中を避ける理由には、古くから二つの説明があります。
一つは、ご神前の延長線上にあたるためです。
神座の延長線上にあたる場所なので、その真ん中を歩くことは畏れ多いと考えられてきました。
もう一つは、正中は神様がお通りになる道という考え方です。
神社や神職によって説明の仕方は異なりますが、どちらも「神様への敬意を表すために中央を避ける」という点では共通しています。
では、正中は何センチあるの?
ここが今回の本題です。
実は、「正中は幅〇センチです」と定めた決まりはありません。
正中とはあくまでも参道や社殿の中心を示す概念なので、本来であれば幅を数値で表すものではないのです。
とはいえ、「どれくらい避ければいいの?」という疑問はもっともです。
そこで参考になるのが、神職が祭式で行う屈行(くっこう)という作法です。
屈行から考える正中の幅
屈行とは、祭典の中でやむを得ず正中を横切る際に行う祭式作法です。
正中を通るときは、
- 約15度腰を折る。
- 頭を下げた姿勢を保つ。
- そのまま3歩進む。
という作法で正中を通過します。
この「3歩」が一つの目安になるのではないかと私は考えています。
神社祭式に基づいた正中の幅の答えは「約90cm〜1m」
成人男性の歩幅は60〜70cmほどと言われますが、神職は白衣や袴などの装束を着けているため、普段ほど大きく歩くことはできません。
そのため祭式での3歩は、およそ90cmから1m程度になることが多いでしょう。
もちろん、これは神社本庁などが定めた正式な基準ではありません。
正中は本来「参道や社殿の中心」を意味するものであり、幅が決まっているわけではありません。
ただ、「どれくらい中央を避ければよいですか?」と聞かれたら、神職としては約90cm〜1mほどの幅を正中と考えて避ければ十分だと考えました。
あまり神経質になる必要はありません。
大切なのは何センチ避けるかではなく、「神様への敬意を表して中央を譲る」という気持ちで参拝することだと思います。