豆知識

高天原に現れた造化三神を含む別天神と神代七代の正体や特徴、性別を古事記・日本書紀の天地初発神話から解説

古事記では世界が出来上がったことを天地初発と言います。この時に天之御中主神が生まれ、これをきっかけに様々な神々が誕生し世界がつくられていきました。

今回は最初に現れた天之御中主神を含む造化三神と神世七代についてわかりやすく解説していこうと思います。

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天之御中主神と高御産巣日神と神産巣日神ら造化三神でこのうち活躍が見えるムスヒの二神の性別は対を為す

まずは古事記本文の書き出しの部分を抜き出しましたのでご覧ください。

天地初めて発けし時、高天原に成りませる神の名は、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ。次に、高御産巣日神たかみむすひのかみ。次に、神産巣日神かむすひのかみ。この三柱の神は、みな独神ひとりがみと成り坐して、身を隠したまふ。

冒頭でお話した通り、古事記では世界が出来上がったことを天地初発と言います。上記の記述の通り、天地初発において初めに生まれた神は天之御中主神で、次に高御産巣日神と神産巣日神が生まれました。これら三柱の神を合わせて造化三神をといいます。

天之御中主神は天地初発の場面以外ではほとんど登場せず直接的に活躍する場面は記紀において一度も描かれていません。天之御中主神についてはこちらのページで紹介していますので合わせてご覧いただくことをオススメいたします。

高御産巣日神と神産巣日神は古事記や日本書紀においても活躍する場面が何度も描かれており、特に高御産巣日神は天照大御神とともに高天の原を統べる神として重要な役割を果たします。また、どちらの神も現在の宮中三殿の神殿の前身であり古代から中世にかけて神祇官西院に置かれた八神殿で祀られた8神に含まれています。さらに、弘仁6年(815年)に編纂の氏族の祖先や氏名の由来について記した『新撰姓氏録』でも高御産巣日神と神産巣日神は多くの氏族が氏神としていることが伺えます。

 

神産巣日神は御祖命と表されるから女性神であり、対を為す高御産巣日神は男性神か

須佐之男命が大気都比売神を殺害してしまった場面や大国主神が少彦名命と出会う場面では神産巣日神は「神産巣日御祖命」という神名で現れます。

御祖神みおやのかみというのは祖先神という意味ですが、この言葉は「天照大御神は天皇家の御祖神である」と使われることが多いです。この用例に限らず御祖神という言葉は、古来より単に祖先神を表す言葉ではなく、女性である祖先神に使われる言葉です。以上の理由から神産巣日神は女性神ではないかと推測されているのです。

造化三神においてムスヒの神が二柱あるということは、記紀が陰陽思想の影響を受けていることを考慮すると高御産巣日神と神産巣日神は対の関係にあると理解することが通常であり、高御産巣日神は男性神であると考えられます。

祝詞には「カムロキ・カムロミ命」という神名が頻出し、「キ」「ミ」という言葉からそれぞれ男女の神であると解釈することができます。記紀にはこれらの名前を持つ神は現れないため具体的にどのような神であるか明確に判定することはできませんが、上記のように高御産巣日神と神産巣日神を男女の対の神であると解釈してカムロキ・カムロミに当てるものが有力説として存在しています。

造化三神、宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒゴチ神)と天常立神(アメノトコタチ神)ら5柱の別天神の神名の由来

次に国稚く、浮ける脂の如くしてくらげなすただよえる時に、葦牙の如く萌え騰る物に因りて成りませる神の名は宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ。次に天之常立神あめのとこたちのかみ。この二柱の神も、みな独神と成り坐して身を隠したまふ。上の件、五柱の神は別天つ神。

このように造化三神の次に宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神が生まれ、ここまで現れた五柱を別天神といいます。宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみの「ウマシ」とは美称、「アシ」とは葦、「カビ」とは芽を表しており、湿地帯に生える生命力が強い植物の象徴である葦が含まれているところがポイントです。日本の風土は温暖湿潤で植物が成長しやすい環境であり、自然と共にあった日本の様子が表されています。「ヒコ」は彦、「ヂ」は爺であり、生命力の象徴である男神であるということが伺えます。

天之常立神あめのとこたちのかみの「トコ」とは床または底の意で、世界を下から支えて神々や国土の生成を定立した神であると解釈できます。

 

別天神の次に国之常立神や宇比地迩神と10柱5対の神が生まれ、これらを合わせて神世七代という

次に成りませる神の名は、国之常立神くにのとこたちのかみ。次に、豊雲野神とよくもののかみ。この二柱の神もまた、独神と成り坐して、身を隠したまふ。次に成りませる神の名は、宇比地迩神うひぢにのかみ。次、妹須比智邇神いもすひちにのかみ。次に、角杙神つのぐひのかみ。次に、妹活杙神いもいくぐひのかみ。次に、意富斗能地神おほとのぢのかみ。次に、妹大斗乃辨神いもおほとのべのかみ。次に、於母陀流神おもだるのかみ。次に、妹阿夜訶志古泥神いもあやかしこねのかみ。次に、伊耶那岐神いざなきのかみ。次に、妹伊耶那美神いもいざなみのかみ。上のくだり、国之常立神より以下、伊耶那美神より以前をあはせて神世七代といふ。

別天神の次に国之常立神や豊雲野神と5対の神々が生まれこれらを合わせて神世七代と呼ぶとしています。

国之常立神とは国土の定立を神格化した神で、日本書紀本文では最初に現れた神とされています。豊雲野神とよくもののかみの「トヨ」は美称、「クモ」は虚空、「ノ」は大地形成の象徴であり、天と大地の間の虚空の状態にこれから現れる神々のもととなるものが雲のように漂っていることを表していると考えられます。

 

古事記の天地初発の解釈は本居宣長と平田篤胤で異なり、それぞれ家屋の建築と身体の生成の象徴と説明する

ここから男女一対の神が生まれてきますが、対偶神の解釈については①本居宣長の家屋の建築の象徴であるとする説②身体の生成の象徴であるとする説があります。②の身体の生成の象徴であるとする説は今後たくさんの神が現れることを考えても理解しやすいですが、なぜ①の通り本居宣長は家屋の建築の象徴として理解したか紹介します。

本居宣長は家が建つことと人が成ることが同じであると主張したのですが、これは家をつくるということは鳥が巣をつくって求愛を行うように、もともとは赤の他人であった男女が夫婦になるということと同じであると考えることができるからです。

ここからは①と②の説の両面から神々の解釈を行っていきます。

まず最初に生まれた対偶神は宇比地迩神うひぢにのかみ妹須比智迩神いもすひちにのかみです。「ヒヂ」とは土または泥のことを指しており大地の神であると解釈できます。①の説では国之常立神と豊雲野神によって形成された国土と虚空に動物が住むことのできる土地を形成した神と解釈します。②の説では国之常立神よって形成された国土と豊雲野神が生み出した虚空の混沌から生まれた男女それぞれの性質の材料を表す神と解釈します。

次に、角杙神つのくひのかみ妹活杙神いもいくくひのかみが生まれます。「クヒ」とは杭のことで、構造物を支える存在です。①の説では宇比地迩神・須比智迩神の出現で大地が固まり、構造物の存在の基盤となる杭の発生とその活動を表すと解釈します。②の説では宇比地迩神・須比智迩神によって形成された泥または土による神の形の生成の象徴として解釈されます。

次に、意富斗能地神おほとのぢのかみ妹大斗乃辨神いもおほとのべのかみが生まれます。①の説では「ト」は戸や門を意味しているものとして家屋の完成を表していると解釈できます。②の説では「ト」をホト(陰部)を象徴するものであると解釈し、男女という性質を持った神の象徴として解釈されます。

次に、於母陀流神おもだるのかみ妹阿夜訶志古泥神いもあやかしこねのかみが生まれます。「オモダル」とは男性が女性の容姿を賛美する言葉で、「あやかしこ」とはそれに対する勿体ないという意味の返答を表します。また『日本書紀』では面足尊と表記されており、面が足るということから①の説では国土の表面が満ち足りていくことを②の説では顔が完成され身体が備わるということを表すと解釈できます。

神世七代の最後には伊耶那岐神いざなきのかみ妹伊耶那美神いもいざなみのかみが生まれます。「イザ」という部分は誘うということを表し、男女が夫婦となることを表します

 

①、②の説をそれぞれまとめてみます。

①本居宣長の説

宇比地迩神・妹須比智迩神:国之常立神と豊雲野神によって形成された国土と虚空に動物が住むことのできる土地を形成されたことの象徴

角杙神・妹活杙神:固められた大地に構造物の存在の基盤となる杭の発生とその活動の象徴

意富斗能地神・妹大斗乃辨神:戸や門などの外壁を備えた家屋の完成の象徴

於母陀流神・妹阿夜訶志古泥神:国土の表面が満ち足りていくことの象徴

伊耶那岐神・妹伊耶那美神:男女の夫婦としての関係の象徴

 

②平田篤胤の説

宇比地迩神・妹須比智迩神:男女それぞれの性質の材料誕生の象徴

角杙神・妹活杙神:神の形の生成の象徴

意富斗能地神・妹大斗乃辨神:男女という性質を備えた神の象徴

於母陀流神・妹阿夜訶志古泥神:顔などを備え完全といえる身体を持った神の象徴

伊耶那岐神・妹伊耶那美神:男女の夫婦としての関係の象徴

 

 

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