世界には様々な神話があり、代表的なものとしてギリシャ神話やインド神話が挙げられます。
日本にも古事記・日本書紀において神々の世界の物語が記されていますが、記紀神話を含め世界の神話には類似する内容が多くあります。
今回は日本の神話と世界の神話の共通点を紹介していきます。
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目次
古事記・日本書紀の神話は南太平洋諸島の神話との共通点が非常に多い
日本の神話と南太平洋諸島の神話を比較してみると、細部まで類似しているものが非常に多くあります。
古事記と日本書紀にはそれぞれ異なる穀物の誕生についての物語が記されていますが、今回は古事記からオオゲツヒメという穀物神の話を紹介します。
オオゲツヒメとスサノオ命の五穀誕生神話『古事記』より
スサノオ命がオオゲツヒメに食べ物を出すように頼むと、オオゲツヒメは鼻・口・尻から様々な食べ物を取り出します。スサノオ命はこれを汚いと思ってオオゲツヒメを殺害します。するとその死体から五穀が現れ、これを種として穀物の栽培が行われた。
つぎに、南太平洋諸島の神話としてハイヌウェレ型神話を紹介します。
ハイヌウェレ型神話
ある少女は身体から金を取り出すことができた。あるとき、強欲な人々がハイヌウェレの身体をバラバラに引き裂いて体内の金を取り出そうと殺してしまった。しかし、体内に金は蓄えられていなかった。少女が殺されてしまって悲しんだ親は少女の死体を埋め、そこからタロイモが生まれた。
古事記及び日本書紀並びにハイヌウェレ型神話については以下のページで詳しく紹介しております。五穀とは何で構成されているかや五穀誕生の神話の持つ意味など興味深い話を紹介していますので、ぜひご覧ください。
このように2つの神話を比較すると殺害された神から穀物が生まれたという話が共通しており、これは南太平洋諸島の神話と日本の神話が類似しているのは南太平洋諸島の海人族が日本に渡来し、伝承も同時に伝えたからだろうと考えられます。
ただし、ここで注意しておかなくてはならないのは紀元前14000年に起こったとされる長江文明の存在です。もともと中国の古代文明といえば、世界四大文明のひとつとされている黄河文明を指していましたが、1973年・1978年の発掘調査で黄河文明よりも古い長江文明の存在が明らかにされました。
したがって、長江文明の神話が南太平洋諸島と日本に分かれて伝来していったということも考えられます。
古事記・日本書紀の神話はギリシャから大陸を横断してもたらされた
まずは天の岩戸神話の内容の一部を簡単に紹介します。
天の岩戸神話
イザナギ命は死者の国である黄泉の国から帰ると海で身を清めました。その時にアマテラス大神やスサノオ命などの神々が生まれます。
アマテラス大神は高天の原と呼ばれる天上世界を、スサノオ命は海原を治めるようイザナギ命から命じられました。
ある時、スサノオ命が姉であるアマテラス大神が治める高天の原と呼ばれる天上世界を訪れると数多の乱暴を行い、怒ったアマテラス大神は天の岩戸という岩屋に隠れてしまった。
すると世界から光は失われ、作物も育たなくなってしまった。
これが天の岩戸神話の内容です。
続いて、ギリシャ神話の一部を紹介します。
ギリシャ神話
デメテルという大地を治める女神とその弟であるポセイドンという海原を治める神がいた。ある時、ポセイドンが姉であるデメテルに乱暴を働き、デメテルは黒布に身を包み、洞窟の中に隠れてしまいます。それにより、太陽の力は弱まり、作物が育たないという状況に陥ってしまった。
2つに神話を比較してみると、弟神が乱暴を働いた結果、姉神が隠れ世界が暗闇に覆われるという点が共通しています。
このことから、ギリシャの神話が日本神話に影響を与えているのではないかと考えられます。
『古事記』『日本書紀』の最重要神話「天孫降臨」のスキタイの始祖神話や高句麗の建国神話との共通点
ここまでで日本の神話と南太平洋諸島の神話に類似する点が多くみられるということを紹介してきましたが、この段落では天孫降臨神話については大陸の神話との共通点が多くあることを紹介します。
天孫降臨神話
天上世界の主宰神であるアマテラス大神は、孫であるニニギノミコトに三種の神器「八咫の鏡」・「八坂瓊曲玉」・「草薙剣」を授け、豊葦原水穂国を治めるために天降るように命じた。
ニニギノミコトが天降る際に、サルタヒコ神が道案内を引き受け高千穂の地に天降られた。地上に降られたニニギノミコトはオオヤマツミ神の娘、コノハナサクヤヒメと結ばれた。その間に生まれたヒコホホデミ尊は海神ワダツミの娘であるトヨタマヒメと結ばれ、その子であるウガヤフキアエズ尊は父と同様に海神ワダツミであるタマヨリヒメと婚姻して後の神武天皇が誕生した。
以上が天孫降臨神話の内容です。
これに類似する伝承について、古代ギリシアの歴史家ヘロドトスが『歴史』において説いた紀元前8世紀から前3世紀ごろまで現在のウクライナや南ロシア地方に存在したイラン系騎馬遊牧民であるスキタイの始祖神話について以下のように述べている。
スキタイの始祖神話
タルタギオスという男は天帝ゼウスとボリュステネス河の間に生まれた娘と結ばれ、その子が始祖となった。
次に紀元前1世紀から7世紀ごろまで存在した朝鮮半島の高句麗の始祖神話について、『三国史記』では以下のように記述されています。
高句麗の建国神話
天帝の子である解慕漱と河神の娘である柳花の息子との間に生まれた朱蒙が紀元前37年に高句麗を建国した。
今回紹介した2つの神話には天上世界の神の子が地上世界の神と結ばれて始祖となったという共通点があります。
以上、日本の神話には世界の神話との多くの共通点があることを紹介してみました。
日本の神話はオリジナルの神話ではないということにもなりますからロマンがないように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような経緯で世界の神話を取り入れていったのかを考えるのも面白いです。
また、記紀神話の内容は日本の風土やそこに住む人々の様子を取り入れながら、現存する世界最古の国家とも言われる日本の始まりを述べています。どのような点を取り入れ、あるいは取り入れなかったかを検討することで、古代の日本の信仰の様子を考えるカギになるかもしれませんね。