豆知識

外宮の御祭神である豊受大御神の性別は男女どちらか「記紀や伊勢神道(両部神道)の立場から解説」

伊勢の神宮は皇大神宮(内宮)と豊受大神宮(外宮)という2つの宮から構成されています。内宮の天照大御神の性別は諸説ありながら女性神ということで固まっていますが、外宮の御祭神の性別について中世以降議論が起こりました。今回は外宮の御祭神である豊受大御神の性別について紹介していきます。

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外宮の御祭神である豊受大御神は天照大御神の食事を司る御食津神だから性別は女性のはず

まずは伊勢神宮の由緒では外宮の創建について紹介します。

垂仁天皇の御代に倭姫命が天照大御神の御鎮まりになる地を伊勢に定められましたが、雄略天皇の御代に、天照大御神が天皇の夢に現れて「私ひとりでは食事もままならないので、丹波国の比治の真名井から私の食事を司る神として止由気大神を呼んでほしい。」と教え諭されました。雄略天皇は夢から目覚められて、度会の山田原に立派な宮殿を建てられました。

以上の記述から御食津神すなわち食事を司る神として豊受大御神が呼び寄せられたことが分かります。外宮では毎日2回天照大御神の他、別宮の神々をお呼びして御饌を奉る日毎朝夕大御饌祭が行われています。

古事記や日本書紀には御食津神を殺害してしまい、その神の体から五穀が生まれたというエピソードが記述されています。日本書紀では御食津神の性別について記述はありませんが、古事記では大気都比売おおげつひめという五穀を生み出す御食津神が現れており、神名から女神であることが分かります。

また、記紀神話は世界中の様々な神話を参考にしながら構成されていますが、ハイヌウェレ型神話と言われる世界中の御食津神に関する物語でも女神として描かれています。五穀の起源とハイヌウェレ型神話についてはこちらで紹介していますのでぜひご覧ください。

したがって、御食津神である豊受大御神は女神であるということが予測されます。

 

伊勢神道は両部神道・山王神道などの平安密教に関わる神道思想の影響を受け男神と考える

平安時代になると最澄や空海が唐から伝えた密教が盛んになっていき、最澄は比叡山延暦寺を空海は高野山金剛峰寺を開きました。比叡山延暦寺は日吉大社、高野山金剛峰寺は丹生都比売神社と関係があったように、平安密教では仏教の立場から日本の神を理解することが試みられ、天台宗の山王神道・真言宗では両部神道という神道説を体系化していきました。

特に両部神道は伊勢神道にも影響を与えており、外宮の祭神を男神とする考え方の基盤となった神道説であると考えられますので、少し紹介しておきます。

両部神道では金剛界胎蔵界という2つの世界を想定しており、それぞれに大日如来がいると考えています。この密教の世界観を表しているのが両界曼荼羅で、曼陀羅に描かれた仏を本地とし、神々をその垂迹として解釈します。

2つの世界には陰陽があり、金剛界が陽・胎蔵界が陰と考えられています。陰陽説では女性を陰、男性を陽としていて、天照大御神は女性神だから陰で胎蔵界の大日如来であり、反対に金剛界は陽だから外宮の豊受大御神は男神であると考えられました。

伊勢神宮の特に外宮で唱えられていた伊勢神道には外宮の神格を上げようという意図があったため、上記の考え方を採用しており、伊勢神道に基づいて記された「神道五部書」等では豊受大神と天之御中主神、あるいは月読神、国常立神を同一視する記述があります。

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